いきぢから
by keiji65535
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「例えの出てこない和尚」
 森閑たる山村の片隅にひっそり建つ古寺。古びてはいるが掃除の行き届いているその本堂の中で、一人の男がじっと座して仏像を見つめている。
 男の背後へ、静かに住職が現れた。
「迷いが晴れぬようですな」
 鷹揚な、しかし深い声であった。
「和尚様」
 男は住職の立つ方向へ座りなおし、
「一体、人は罪を逃れて生きることができるものでしょうか」
 住職は微笑を浮かべ、ゆるりとかぶりを振った。
「それは無理というものです。人はただ眼を瞬くだけでも罪を重ねている。それが人の生まれながらに負いし業というもの」
「それでは、人は何のために生まれてくるのでしょう」
「……左様……」
 住職は本堂の内を一通り眺めたあと、脇の木戸をす、と開け放った。
 美しい庭がそこにあった。四季の全てを愛する者の作りし庭であった。
 沈黙が訪れた。
 住職はただ黙して庭を見つめている。男も、住職の視線を追うように庭を眺めている。
 沈黙は続いた。
 たっぷり八分は続いた。
 やがて住職は重い口を開く。
「人とは、人の世とは、左様……」
「はい」
 住職は病的にゆっくりとした動きで庭を指差し、
「あの…………」
「はい」
 再びの静寂。小鳥のさえずりだけが響く中、住職は腕を上げたまま動こうとしなかった。
「あの……松の木……」
「松の木、ですか」
「……の、下の、池……」
「はい、池」
「の、中の、」
「中の?」
「中の……鯉?」
「鯉」
「鯉なんて言ってない。石、石」
「石でございますか」
「……」
「……」
「は、置いといて」
「……はあ」
「……」
「……」
 住職は思い切った様子で腕をぐわわっと上げ、天を指差した。男の視線もその指先を追う。
 で、そっからまた沈黙だった。
「……」
「……」
 住職は何事もなかったように腕を下ろし、
「浮世は、ピンクローターのようなものでしてな」
「ええっ!?」

<続く>
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by keiji65535 | 2008-03-26 23:19 | 自動書記小説
トラウマッチャオ!
 今日は自慢です。

 コミックエッセイ劇場というサイトでイラストレーターのべつやくれい先生が連載されている「ひとみしり道」の第12回にて、僕の体験談を漫画にしていただきました。こちらから読めます。

 申し上げるまでもありませんが、仕事とかでは全くないです。普通に一投稿者として送ったものを採用していただいただけで、ギャランティ的なものは一切ありません。くれよ何か。

 非常に嬉しく有難いことではあるんですが、正直、原文の軽い毒を含む部分がことごとくカットされていたことに対して、若干ジクジたる思いもあります。そこで以下に、実際に送った投稿文を転載し、自己満足の上塗りをさせていただきとうございます。

 あ、ちなみにテーマは「人見知りでよかった(得した)話」です。

 高校生の頃、ある日、休み時間が終わりそうだったので、非常階段で息を殺して文庫本を読むのを切り上げて教室に戻ってみると、誰もいませんでした。
 その時間は英語の授業だったのですが、後からぼんやり聞いたところによると、皆は視聴覚教室で面白くもなんともない洋画を見せられていたようです。面白くない上に、途中で切られたので(だって授業は45分しかないのだからね)、何が何やらといった感じだったみたいです。
 その授業の前、先生は視聴覚教室で授業を行なう旨をクラスの1人だけに伝え、あとはその1人を起点に、クラス全体が見事な結束の元、お互いを誘い合わせて教室を移動したのですが、存在感を消す魔法を生まれ持っている僕のところにだけは、連絡が回ってこなかったというわけです。
 もちろんその時の僕はそんなことを知る由はありませんでしたが、しかし一つだけ確かに解かっていたのは、思いもかけず45分間の自由を手に入れたということでした(頭がおかしいのでしょうね)。
 そこから先は、文字通りの独壇場。床を転げ回ったり、机の上を転げ回ったり、廊下を転げ回ったりしました。
 そして職員用トイレで用を足し、しまいには裏門から学校を抜け出して近くのパン屋で買い食いを敢行しました。その他ここには書けないようなこともしましたが、ここには書けません。
 授業中にする一人遊びは、普段のソレの1000倍面白い。世の中の規律は、この快感のためにこそ存在するのではないかとすら思えました。
 その後、僕が視聴覚教室にいなかったことを知るものは、先生を含め、とうとう誰一人いませんでした。普段から周囲とコミュニケーションをとっていなかったお陰で、神様から素敵な時間をプレゼントしていただけたのです。
 ちなみにそれから十数年の時を経た現在、僕の人見知りは磨きに磨きをかけ、今や対人恐怖症の域に達しております。

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by keiji65535 | 2008-03-02 00:24