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俺たちは腐ったミカンじゃねえ
 学生時代はおおむね真面目なイイコチャンで通してきた僕ですが、1度だけ、職員室に呼び出しっつうのを食ったことがあります。

 あれは中学1年のとき、クラス対抗の合奏コンクールてのがあったんですね。1年の各学級が、合唱パートと演奏パートに半分ずつ別れてナニするわけです。

 で、それぞれのクラスの男女1名ずつが、審査員として選ばれ、採点を担当します。もちろん自分のクラスの出番がきたときには、演奏もやると。2足のワラジです。大変な重労働。

 僕はその審査員に選ばれる名誉を授かりました。なにしろイイコチャンだったもので。四六時中、大人にウケることだけ考えていた甲斐があったってもんです。

 当日、舞台のすぐ前に、各クラスの審査員席がズラリと並びます。仮装こそしませんが。で、机の上には審査用紙。見ると、各クラスの採点表の下に、次のような欄が。


  最優秀合唱賞 ( )組

  最優秀演奏賞 ( )組

  審査員特別賞 (          )賞  ( )組
            (          )賞  ( )組

  例)ハーモニー賞 - 歌と演奏、総合的に優れたクラスに送られる
  

 意味わかります? つまり最優秀賞2賞の他に、審査員各々が“自分で賞の名前を2つ考え”、該当するクラスに与えるわけです。

 僕は頭を抱えました。考えてもみてください。合唱賞と演奏賞がすでに出ているとこに、それらの総合を評価するものまで、例)に挙げられてしまっているんです。じゃあ他、何があるよ。しかも2つも。

 そこで僕の明晰な頭脳がはじき出したのは、次のような考えでした。
 1年のクラスは8組まである。審査員はそこから2人ずつ選出されているので、全部で16人。その全員が2つずつ賞を考えるということは、特別賞の数は合計32にもなる。常識的に考えてそれら全てを表彰するわけがない。つまりこの特別賞は表彰とは関係がない。てことはつまりつまり。
 結論、ここはオフザケでいい。

 そう思い至ると気楽なもの。僕は、演奏中に前列に並んでいた男子の1部が壇上からなだれ落ち、会場に爽やかな笑いをもたらしてくれたあるクラスに、「大爆賞」の栄誉を与えることにしました。あと1つはよく憶えてませんが、たぶん「普通で賞」か何かだったんじゃないでしょうか。

 そしてコンクールは滞りなく進行、最終的に表彰式を迎えるわけですが、ここで驚くべき出来事が。

 2クラスに最優秀賞の授与が行なわれたあと、なんと審査員特別賞が読み上げられはじめたのです。そしてあろうことか、その内の1つは審査用紙に例)として挙げられていた「ハーモニー賞」でした。

 特別賞は全部で3つ、授与されました。なんじゃそら。全32個の賞の中から、その3つを選んだ基準は何やねん。しかも1個パクリやんけ。俺がどんだけ必死に考えた思とんねん。

 コンクール終了後、理不尽な思いを抱えたまま自分のクラスに戻った僕に、さらに理不尽な出来事が襲い掛かります。

「○組のミヤタ、×組の●●、至急、職員室まで来なさい」

 クラス中の視線が僕に集まりました。そうでしょう、普段の僕は、間違っても呼び出しを受けるようなキャラではありません。

 どきどきパニック状態で職員室に出向いた僕と、もう一人別のクラスの審査員に、もう10年はセックスしていないであろう黒ブチメガネの女教師が、チリ毛を振り乱しながら容赦ない罵声を浴びせてきます。

 しかし内心、とても納得がいきません。どう考えても間違っているのは審査システム、ひいてはそれを考案したであろう、目の前のイキオクレです。

 しかし当時の僕には、その思いをうまく言葉にしてこの音楽教師を論破するだけのボキャブラリーの持ち合わせはなく、ただ歯噛みして嵐が通り過ぎるのを待つより他ありませんでした。

 そのときの悔しさが僕に言葉の大切を気付かせ、のちに作家を志すきっかけになったといえば、嘘になります。

 ちなみにもう一人呼び出されたのは僕の友達で、そいつも相当マジメな男だったので、意外に思った僕が後から事情を尋ねてみたところ、何でも、後ろの席に座っていたやつに審査用紙をひったくられ、ボールペンで「うんこちゃん賞」か何か書き込まれてしまったのだそうです。

 いやそれは言えよ、と思いました。
by keiji65535 | 2005-11-28 06:48
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